H25.6 増えている食物アレルギー
名誉院長(小児科部長)
楫野 恭久 医師
食物アレルギーは、本来生きるために必要な食べ物が、体に良くない症状を引き起こしてしまうものです。
症状には、みなさんご存知の皮膚症状(かゆみ、発疹)の他、粘膜症状(くしゃみ・鼻汁、結膜充血・浮腫)、消化管症状(腹痛、悪心)、呼吸器症状(咳、呼吸困難)、全身症状(多臓器症状のアナフィラキシー、頻脈やぐったりや血圧低下のアナフィラキシーショック)があります。
発生時期で注意が必要
アレルギーを起こす食物として、乳幼児では鶏卵、牛乳、小麦がよく知られていますが、これらの多くは、小学校に上がるまでには症状を呈さなくなります。定期的な検査診断で、アレルギーを起こさなくなった事を確認し、食物除去を解除することが大切です。学童から成人で新規発症する食物アレルギーは、甲殻類(エビ、カニ)、果物(キウイ、バナナ)、小麦、魚類、ソバ、ピーナッツが主な原因食物で、これらは自然軽快の可能性は低いと考えられています。なお、鶏卵アレルギーと鶏肉、牛乳と牛肉には関係がありません。
1)ある特定の食品を摂取した後、2時間以内に何らかの症状が出現したことがある、2)小学生以上で、小麦製品、魚介類を接種後、2~4時間以内に運動したことで症状が出たことがある、3)花粉症のひどい人で、生の果物や野菜を食べた後、口の中の違和感など、何らかの症状の出現したことのある人は医療機関にご相談ください。
食物アレルギーの治療は、正しい診断に基づく必要最小限の食物除去と栄養指導です。積極的に治癒を誘導する治療方法や薬物は現状ではありません。
関係者の情報共有が大切
2012年12月、東京で食物アレルギーを持つ小学生が、給食後にアナフィラキシーショックにより亡くなるという事故が起こりました。アナフィラキシーを起こした際の治療薬に、自己注射薬「エピペン」があります。この薬の管理方法や、接種すべきかどうかの判断基準は、本人および保護者のみならず、教師・保育士などと情報共有することが大切です。