
H25.8 脳梗塞について
神経内科医長
河野 直人 医師
脳梗塞は血栓が血流を止め、脳細胞が
壊死する病気――早期に治療開始する
ことで、後遺症を軽くすることができます
三大成人病の一つ、脳卒中には脳血管が詰まって起こる脳梗塞、脳血管が破れて起こる脳出血・クモ膜下出血などがあります。
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本コラムでは脳梗塞について述べます。脳梗塞は脳の細動脈に血液の固まり(血栓)などが詰まって血流を止めてしまうため、脳細胞が死亡(壊死)する病気です。
症状としては、意識障害、手足の麻痺やしびれ、感覚障害、ふらふらしてまっすぐ歩けない、呂律が回らない、言葉が理解できないあるいは言葉が出ない、視野が欠けるといった様々なものがあります。
また、一過性脳虚血発作(TIA)といって、これらの症状が一過性に出現し、多くの場合は数分程度で改善する場合もあります。
薬で血栓を溶かす血栓溶解療法
診断は頭部CT、MRIなどで行います。脳梗塞の治療として、急性期には抗血栓療法、脳保護療法、抗脳浮腫療法、リハビリなどを行います。
近年、組織プラスミノーゲンアクチベータ(tPA)という血栓溶解剤(強力に血栓を溶かす薬)を用いた血栓溶解療法が欧米で実施され、わが国でも2005年10月より健康保険に導入されました。
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脳梗塞の「症状が出てから数時間以内」であれば、血栓溶解剤で詰まっている血管を再開通させることにより脳梗塞の完成を阻止し、麻痺や言葉の障害、意識障害などの後遺症をできる限り少なくする治療です。
方法として手足などの静脈から一般的な点滴と同じ要領で点滴投与するだけです。従来の治療よりも予後改善効果(脳梗塞の後遺症が軽くなること)があるとされておりますが、脳出血や出血性脳梗塞の副作用もあり、かえって症状を悪化させる場合もあります。
血栓溶解療法の選択は時間の制約が
このため治療を受ける場合には制限があります。血栓溶解療法を行っても良いか判断するために様々な検査を行う必要があるため、病院に到着しても直ちに本治療を行うことはできません。
これまで脳梗塞が発症してから3時間以内でなければ本治療を行うことができなかったため、実際には脳梗塞が発症して2時間程度の間に病院に来られなければ血栓溶解療法を行うことは困難でした。
その後の研究で発症4.5時間までの本治療の有効性・安全性が証明されたことから、海外に引き続き日本でも発症4.5時間までの脳梗塞に対して血栓溶解療法を行うことが可能となりました。
従って脳梗塞が発症してから3.5時間程度までの間に病院に来ていただければ本治療を行うことができる可能性があります。もちろん本治療の適応がないと判断された場合でも、従来の治療を行うことができます。
症状が出たら迷わず早めの受診を
なお、当院でも血栓溶解療法を行っておりますが、残念ながらマンパワー不足のため365日24時間いつでも治療可能というわけではありません。
島根県立中央病院や島根大学と連携することにより、患者さんが最善の治療を受けられるように努めています。いずれにせよ早期に治療開始することにより予後を改善することができます。
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一過性脳虚血発作(TIA)の場合も含め、おかしいと思った時には、直ちに迷うことなく救急要請、病院受診してください。

