H25.11 「脂肪酸」ってなに?
内科系診療部統括部長 古家寛司 医師
皆さんは、「脂肪酸」についてご存じですか?それではEPA、DHAはどうでしょう。テレビやCMでお聞きのこともあるかもしれません。EPAやDHAも脂肪酸の一つです。
脂肪酸にはたくさんの種類がありますが、中性脂肪としてエネルギーを貯蔵したり、リン脂質として細胞膜を構成したり、生理活性物質の原料になったりなど、体内で重要な働きをしています。
健診等の血液検査で中性脂肪TGを測っていると思います。中性脂肪はまさに脂肪のことで、おなかの周りの皮下脂肪やメタボリック症候群で有名な内臓脂肪として貯蔵されます。
中性脂肪は、グリセロールというアルコールに、3個の脂肪酸が結合したものです。脂肪酸は炭素の二重結合を持たない飽和脂肪酸と二重結合を持つ不飽和脂肪酸に大別されます。
炭素の二重結合が増えると「固まる温度」が下がります。動物油(ラード、バターなど)は常温で固体ですが、植物油(サラダ油、オリーブ油など)は常温で液体です。これは、植物油には不飽和脂肪酸が多く含まれているからです。
ちなみに、マーガリンが植物油なのに固形であるのは、不飽和脂肪酸を飽和脂肪酸に変化させているからです(そのため、有害なトランス脂肪酸が含まれていることがあります)。
二重結合を2つ以上持つものを多価不飽和脂肪酸といいます。多価不飽和脂肪酸の中でもn-3系脂肪酸とn-6系脂肪酸は人間では合成ができないため「必須脂肪酸」といわれています。
特にn-3系脂肪酸は摂取不足しがちです。n-3系には、EPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)やαリノレン酸などがあります。
EPAやDHAはイワシやサバなどの魚に多く含まれます(缶詰にも含まれています)。最近注目されているエゴマ油はαリノレン酸が豊富です。植物油も原材料により脂肪酸の種類や量が異なります。
世界的には地中海食が心臓病の予防に効果があると報告されています。地中海食はオリーブ油、ナッツ、野菜、魚介類などに富む食事です。オリーブ油にはオレイン酸(n-9系一価不飽和脂肪酸)が豊富に含まれています。食生活にオリーブ油を採り入れてみるのもいいと思います。
ただし、脂肪は高カロリー(1gは9kcal)ですので、摂りすぎて太ってしまっては逆効果です。
脂肪酸の初歩についてお話ししました。皆さんも脂肪の質についても関心を持って、食生活をさらに豊かにしましょう。