
第88回 『健康を願えば』
初詣で健康を祈願された人も多いことと思います。病気やけがで、苦しく悲しい思いをする事がなくなれば良いと願う気持ちはだれも同じですが、未だ病気もけがもなくなる気配はないようです。
しかしどうでしょう。若い頃に結核が国民病だった80才以上の人にとって、今と昔では病気の様子はずいぶんと様変わりしたことでしょうし、私が医師を続けてきた20数年の間でもたいそうな変化がありました。
20年前には、大きな脳出血のため救命できない働き盛りの人をよく経験したものですが、最近はそこまで重篤な人は少なくなりました。また交通事故による死者は減少を少し続けており、昨年は、初めて5000人を下回ったという、うれしいニュースもありました。
これらはいずれも生活環境の改善や予防対策の成果です。
医療技術の向上はガンや難病の治療に貢献しています。脳神経外科医としては残念なことですが頭のけがや脳卒中に関しては「医療技術が向上して安心してもらえるようになりました」と胸を張ることができません。やはり予防が一番大切なのです。
けがや病気から体を守るためには、知恵と習慣を身につけることがなによりだと思います。
最近は、生活習慣病のことがテレビや新聞などでもよく話題にされます。メタボリックシンドロームなどと難しい名前が付いていますが、簡単に考えれば、血圧が高ければ病気になり、昔から「腹八分目」の実行が、予防にとっては尤もなことだということです。そして、知恵を絞って様々なストレスを避けるように工夫することが大切なのです。
アルコールは脳卒中の重要な危険因子ですし、喫煙が健康に重大な影響を及ぼすことはいうまでもありません。酒やタバコは体にとって大変なストレスになっているのです。そこで、気分転換に運動して、気持ちのよい汗をかいてみてはいかがしょう。
事故やけがの予防も大切です。子供の頃から車に乗ったらすぐにシートベルトを着用し、自転車に乗るときにはヘルメットをかぶる習慣をつけるとよいのです。みんなで健康に目を向けてそういう環境を創っていけば、子供たちが大きくなった頃も、健康で明るい地域であり続けることは間違いないと思います。
大田市立病院 外科系診療部統括部長 福田 稔
