
第34回 息苦しさを感じたとき
循環器科医長 梅野 哲弘
セキが続いたり、息苦しさを自覚したりしたときには、私たちは風邪やぜんそくなどの病気を真っ先に考えますが、実は、心臓の機能が低下しても同じような症状がみられることがあります。
これを、心不全症状といいます。
心臓は体の各部分に絶え間なく血液を送る二つのポンプ機能を持っています。 一つは、血液を送り出す働き、もう一つは血液を受け取る働きです。
しかし、そのポンプ機能が低下するとどうなるでしょうか。血液を送り出す力が低下すると、心臓から前方に血液が進みにくくなり、心臓の手前で血液がもどるところにうっ滞が生じます。 肺は酸素を取り込み、二酸化炭素を体外に出す重要な働きをしながら、たくさんの血液を、直接心臓へ返しています。 心臓のポンプ機能が低下すると肺に多くの血液がうっ滞し、血液のガス交換がうまくいかなくなります。このときの症状は、酸欠状態をイメージしてもらえばわかるように、「息苦しい」という訴えになります。
心不全の症状が軽いときには、平地を歩くときは何ともないですが、坂道を上がったり、重い物を持ったりすると、息切れを認めます。 もう少し状態が悪くなると、あお向けになって寝ると、セキが続いたり、息苦しくなったりしますが、体を少し起こすと楽になります。
さらに症状が悪化すると、夜、突然、息苦しくなって目が覚め、起き上がっても回復にしばらく時間がかかるようになります。 このとき、しばしば、ぜんそくのように「ヒュウ、ヒュウ」と音がします。これは、すぐにも入院治療が必要な重篤な状態であるといえます。
セキが長く続いたり、また息切れがあったりするときは、大切な「心臓」のことを考えて、かかりつけ医や病院での受診をおすすめします。
