
第62回 腰痛と整形外科
腰痛は二足歩行をする人間にとって宿命ともいえる病状です。このつらい腰痛に悩んだときの窓口となるのが、整形外科です。
しかしながら整形外科に行くのは、ほんの一部の腰痛患者さんで、多くの人は、はり、きゅう、マッサージなど、整形外科以外の施術に頼っているという現状ではないでしょうか。
腰痛には 「がん」 など重篤な病気が隠されている場合もあり、いきなり大衆薬や民間療法による施術を受けるのはお勧めできません。腰痛の原因を究明したうえでに正しい治療が必要です。
整形外科で適切に治療した場合、腰痛のほとんどが、短期間でよくなることがわかっており、その間病状に合わせた治療を提供することができます。また、不幸にして腰痛が重症化した場合でも、手術をしない保存療法から最先端の外科手術まで、整形外科で提供できる治療の方法はいろいろあります。
例えば、突如腰に激痛が走り、ある姿勢で固まったように「動けなくなった場合、ほとんどの人が 「何が起きたのだろう」 と、たいへんな不安を感じます。 「歩けなくなるのではないか」 「一生治らないのではないか」 など、過剰な心配いが、ますます痛みを増幅させます。しかしそう心配することはありません。欧米の調査によれば、一生のうちに腰痛にかかる割合は、51.4%~69.9%と言われています。
日本での有訴率の調査を見ると、首位を占めるのが 「腰痛」 です。特に65歳を過ぎると、その率は極めて高くなり、ほぼ5人に1人が腰痛を経験しています。しかし、多くの腰痛は、時間の経過とともに自然によくなっていきます。
急性期のうち、腫瘍や感染などの深刻な病気を除いたものでは、約70%が発症後1か月以内に、約90%が3か月以内によくなるといわれています。
ほとんどの人が、つらい急性期を乗り切ることで回復していきます。
現在腰痛で悩んでおられる人、また、今後もし腰痛になった場合も、あれこれ思い悩む前に、まず整形外科を受診してみてください。きっと答えが見つかるはずです。
大田市立病院 外科系診療部整形外科・臨床研修部副部長 西 英明
