
第38回 頭の痛い話
神経内科医長 梅枝 伸行
頭痛は、誰しもが感じたことのある症状だと思いますが、頭痛と一口に言ってもその痛みの中身は千差万別。「がんがんする感じ」「突き刺さる感じ」「締め付けられる感じ」「頭に帽子をいつもかぶっているような感じ」等々感じ方も違いますし、痛む部位にしても「頭の後ろが痛い」「片方だけ痛い」「こめかみが痛い」「眼の奥が痛い」などいろいろです。
たいていの人は、ちょっとした頭痛なら我慢し、痛みがひどくなってきたら市販の頭痛薬を飲んで対処されています。ところが、それでも治らないとき、「もしかしたら重い病気ではないか」と心配になり病院を受診されるようです。ですから、多くの患者さんは、診察中不安でたまらない表情です。「そうですねえ・・・」などと医師の言葉が止まるだけで、「治らない病気なのか」と不安が重なり、頭痛もますますひどくなるということさえあります。医師にとっては、まさに頭の痛い話です。
けれども、どうか安心してください。頭痛はたしかに体からのSOS信号なのですが、頭痛で受診されるほとんどの人は重い病気などではありません。私たち医師は、患者さんのそれぞれの痛みの症状を詳しく聞き、必要に応じて検査も行い、そこに潜む病気を考えていきます。頭痛だけで一冊の本が書けると言われるくらい、それこそいろいろな原因で頭痛が起こりますが、ほとんどの場合、適切な治療で頭痛はよくなります。多くの女性が悩んでおられる「片頭痛」にも、よく効く薬が最近できました。
もちろん、ごくまれに「くも膜下出血」や「脳腫瘍」などの命にかかわる重大な病気が隠れている場合もあります。特に、それまで頭痛のなかった人に急に頭痛が出てきたときは要注意です。重大な病気を早く見つけるためにも、毎日の不快な頭痛を楽にするためにも、自分で勝手に判断して市販薬を飲んでその場しのぎをせず、どうか気軽に神経内科を受診してみてください。
