
第07回 蓄膿症について
耳鼻いんこう科医長 高本 宗男 (前任)
蓄膿症(以下、慢性副鼻腔炎)と聞かれて青バナをたらし、袖をテカテカさせて遊ぶ子ども・・・を思い浮かべるかたはもう、あまりおられないかもしれません。 生活環境の改善で最近はひどい症状の患者さんは減っていますが、慢性副鼻腔炎は今でもよくある鼻の病気の一つです。
鼻はその奥で顔面の骨にあるいくつかの空洞につながり、ひろがっています。この空洞を副鼻腔と呼び、慢性副鼻腔炎はここに炎症が継続する病気です。 慢性副鼻腔炎の症状はいわゆる「風邪」の延長のようなものです。はじめ、透明な鼻水がでていたのに、いつの間にか粘りの強い青バナ・黄バナとなってきたときは副鼻腔にも細菌の炎症がひろがって膿の混じった鼻汁がでている状態です。 その後、鼻をかんでも粘ってかみきれずに鼻詰まりが続きます。さらに、粘った鼻汁が咽喉へ流れ落ち、痰がからみ、咳が続きます。そして、痰で咽喉が粘つき、乾いた感じがします。以上が慢性副鼻腔炎の一般的な症状です。 また、あまり鼻汁や痰の症状がないときも、眼の周囲や前頭部の重いような痛みを感じることもあります。頭痛が続くために脳神経外科などで検査をして、偶然みつかる場合もあります。 副鼻腔炎は鼻・顔面のレントゲン写真を撮れば、本来の空洞の場所に炎症の影が映ることですぐにわかります。さらに、X線CTの検査で副鼻腔の内部は詳しく診る事ができます。
また、最近はカメラを使って鼻内から鼻汁が咽喉へ流れ込む様子を直接見ることもできます。ただ、まれに副鼻腔にも癌ができることがありますので、痛みもなく頬部が腫れてくるときや、鼻かみで出血が続く場合は癌がないかも調べる必要があります。長い間症状を放置していると、副鼻腔の中の粘膜が炎症でいたみ、元の健康な状態に回復しにくくなってしまいます。このため薬の進歩や、手術手法の改良はありますが、残念ながら、慢性副鼻腔炎は今でも、完全には治りにくい病気の一つです。慢性副鼻腔炎の治療には大きく分けて薬の内服によるものと、手術によるものがあります。ごく軽症の方は薬の内服だけでほぼ治りますが、それでも3~6ヵ月は内服を続けることが必要です。3ヵ月くらい続けて改善しない方は鼻腔内に鼻茸(良性のポリープ)があったり、カビが原因の特殊な炎症だったりしますので、その場合は手術の併用をおすすめします。
手術治療は近年かなり改善されています。昔は局所麻酔だけで痛い思いを我慢していただき、頬部(上顎)の骨を削って行いました。最近はより患者さんに負担をかけずに治療の効果をはかるため、全身麻酔下にカメラで鼻の中をのぞきながら行う方法が主流となってきました。この方法だと、傷も鼻内だけですので、回復も早く、頬部のしびれなど、嫌な症状もおこりません。当科でもほとんどこの方法で手術を行っています。
