第94回 『妊娠とインフルエンザ』
今回は、妊娠と季節性インフルエンザについてお話します。
季節性インフルエンザは、主に冬期に流行するインフルエンザウイルスによる感染症で、急激な38度以上の発熱・頭痛・関節痛・筋肉痛などの症状が一般的です。多くのみなさんは、特に治療を行わなくても1~2週間で自然に治癒しますが、乳幼児・高齢者・持病がある人は重症化しやすいとされ、妊婦さんもインフルエンザにかかると重症化しやすいとされています。
もしも、妊婦さんがインフルエンザかな?と疑われる場合には、かかりつけの産婦人科を直接受診する前に、あらかじめ電話で相談をお願いします。これは妊婦さんから妊婦さんへの感染防止という観点から大切なことです。
インフルエンザウイルスによる胎児(赤ちゃん)への悪影響(奇形など)は否定的ですが、とくに妊娠初期に適切な治療(発熱に対する解熱処置など)を行うことが大切です。
現在、日本では抗インフルエンザウイルス薬として「リレンザ」「タミフル」が使用できます。また、インフルエンザワクチンはウイルスの病原性をなくした不活化ワクチンであり、妊婦さんや胎児へ悪影響はないと考えられています。しかし、実際には、抗インフルエンザウイルス薬内服やインフルエンザワクチン接種に関しては、妊婦さんご自身が本当に必要な症例なのか(妊娠週数や症状の程度、持病の有無など)を、個別に相談したうえで使用されることをお勧めします。
最後に、妊婦さんご自身で手洗い・うがい・マスクの着用をすること、夫や子どもさんなどのご家族にインフルエンザワクチンを接種してもらうことで、インフルエンザにかからないように努めることが大切です。
また、最近ニュースになっている新型インフルエンザ(H1N1)感染症の場合も、季節性インフルエンザと同様に対応することが大切です。
大田市立病院 産婦人科医長 原田 崇