第77回 64列マルチスライスCT
今回は、平成19年8月から当院に導入された、新しいCTについてお話したいと思います。
新しいCTの特長を一言で言えば、「一度に広い範囲を細かく撮影できる」ということです。
具体的に言いますと、従来のCTでは、最小で2㎜(ミリメートル)、最大で10㎜の1列の撮影しかできなかったのですが、新しいCTでは、0.5㎜の薄さで、同時に64列の撮影が可能です。
これくらい薄く撮影することができれば、横断像のみでなく、横断像でも斜断像でも、あらゆる方向の断層画像を成功することができます。また、同時に64列(0.5㎜×64列=32㎜)を撮影できるので、同じ内容の検査であれば、より短い時間で撮影ができます。
従来は30秒以上かかった撮影も、新しいCTでは10秒ほどの息止めで撮影できるようになりました。長い息止めができない高齢者のみなさんや子どもさんでも苦痛が少なく、きれいな画像を撮ることができます。
細かく、早く撮影できるという特長を最大限に発揮できる検査がCT使った血管造影です。
新しい装置を用いれば今までの装置では不可能であった 「心臓を栄養する」 冠動脈までかなり詳細に撮影することが可能になりました。
心臓は絶えず動いていますので、従来は直接動脈に管を入れ、そこから造影剤を流して撮影する、かなり身体に負担のかかる検査を行わねばなりませんでした。
しかし、新しいCTを用いれば、静脈から造影剤を投与して撮影することができるので、外来で行なうことが可能です。労作時の前胸部痛など狭心症が疑われる場合に、この検査で冠動脈に狭窄(きょうさく)があることがわかれば、致命的な心筋梗塞になる前に血管拡張術など適切な治療を施すことができます。
ただし、不整脈のある人、心拍が早い人、冠動脈の石灰化が非常に高度の人などは、CTでの冠動脈検査に不向きな場合もありますので、検査を希望される際には、主治医とよく相談してください。
~ 「心臓を栄養する」 とは心臓の筋肉(心筋)を養うという意味です。冠動脈が閉塞すると、心臓に栄養や酸素が供給されなくなり、壊死に陥るのです。つまり、心筋梗塞という病気になります。~
大田市立病院 診療支援部長/放射線科医長 杉原 正樹