
第59回 「PADAMって何?」
みなさんは 「PADAM」 という言葉を聞いたことがありますか?最近はマスコミでも取り上げられる頻度が多くなっています。答えは、「Partial Androgen Deficiencyin Aging Male」、つまり 「加齢にともなう血中男性ホルモンの低下に基づく生化学的な症候群」 です。わかりやすく言うと、 「男性更年期障害」 です。
更年期障害? 女性だけの話じゃないの? と思われる人も多いかもしれません。ところが、欧米では古くから話されていて、日本でも近年この疾患概念が、脚光を浴び始めました。主たる原因は加齢とともなう男性ホルモンの低下です。これは閉経という生理的変化にともなって、女性ホルモンが急激に低下することで生じるとされる女性の更年期障害と同じです。一般にPADAMの症状は、精神・心理症状、身体症状と性機能関連症状の3つが主なものとされています。つまり、抑うつ、不安、睡眠障害、集中力・記憶力の低下、疲れやすい、動悸、冷や汗、めまい、息苦しさ、胸痛、ほてり、吐き気、食欲不振、胃痛、便秘、下痢、頭痛、耳鳴り、肩こり、腰痛、手足のしびれ、冷感、性欲・勃起力の低下、細かい字が読みにくい、体毛の減少、皮膚の変化、そして自殺企図とさまざまです。
40歳~50歳代で思い当たる人はいらっしゃいますか? すでに内科、脳外科、耳鼻科、整形外科、精神科、診療内科などを受診した人も少なくないと思います。しかしながら、もしこういった症状が、PADAMによるものであれば、治療方針がかわってきます。PADAMの患者さんの多くは、勃起不全を合併しています。勃起不全については、PADAMの中心である中高年のみならず、老年期、あるいは20歳~30歳代の男性の中にも悩んでいる人がいらっしゃるのではないでしょうか?
そんな場合は、泌尿器科を受診してください。話を聞いて、必要に応じて、勃起不全改善薬、陰茎海綿体注射、男性ホルモン補充療法といった治療を行います。性の悩みはいくつになっても話にくいものかもしれません。泌尿器科はなんとなく敷居が高いイメージがあるかもしれません。
PADAMとは中高年男性にそろそろ軌道修正しないと付けが回るよと教えてくれる天の声と思ってください。悩みを解消して、豊な老年期を迎えるための準備をしようではありませんか。
大田市立病院 泌尿器科医長 本田 聡
