第30回 リハビリテーションという言葉の持つ意味
リハビリテーションセンター医長 福田 理子
今回は皆さんの健康と直接的には結びつきませんが、リハビリテーションという言葉の持つ意味について考えてみました。
多くの人がリハビリテーションという言葉で思い描かれるのは、歩く練習、手や肩を動かすといった機能回復訓練ではないでしょうか。 実際、入院で行うリハビリテーションは機能回復訓練に重点がおかれています。
しかし、リハビリテーションという言葉の持つ意味はそれだけではありません。
1981年の国際障害者年にWHO(世界保健機構)はリハビリテーションを次のように定義しました。「リハビリテーションは能力低下やその状態を改善し、障害者の社会的統合を達成するためのあらゆる手段を含んでいる。さらに、障害者が環境に適応するための訓練を行なうばかりでなく、障害者の社会的統合を促すために全体としての環境や社会に手を加えることも目的とする。そして、障害者自身、家族、彼らが住んでいる地域社会が、リハビリテーションに関係するサービスの計画や実行に関わり合わなければならない」。
誰しも望んで病気やけがで障害を負う事はないでしょう。
しかし、いつ自分自身が、そして自分の大切な人がそのような境遇へ陥るかはわかりません。障害を負ってしまった時も人間としての基本的な権利をだれも奪うことは出来ないはずですが、現在の日本の社会では障害を負った時に元気だったころと同様の活動ができる環境が十分に保証されているとは言い難いのが現状ではないでしょうか。さきに書いたWHOの定義にもあるように、本来のリハビリテーションとは、社会活動の参加の回復まで含む言葉なのです。
機能回復訓練ですべての方において機能が完全に回復することは現実的には困難です。また完全なる回復に固執するとかえって生活の質を低下させる結果に終わることもあり得ます。 本来の意味のリハビリテーションを実行するためには、誰に障害が起こっても、その後も自分自身の人生を生きていくことが日常的に可能な社会の実現が大事だと思います。
そのためには、社会を構成するだれもがこのような視点にたって生活したり社会システムを構築していく必要があると考えますが、皆さんいかがでしょうか?