
第43回 痔主(じぬし)様
外科医長 坂下 吉弘
人類が2本の足で立って歩き始めたその日から、人間と痔との付き合いは始まったと言われています。
日本人の成人男女1万人を対象にしたある調査によると、約75%の人が過去・現在において痔の経験があったそうです。症状の程度に差はあると思われますが、4人に3人は痔主様ということになります。 多くの人が痔で悩んでいるというのに、病院に来られる人が、意外に少ないのも事実です。「恥ずかしい」「嫌だ」「痛い」「秘め事にしていたい」・・・。そんな気持ちも痔主様共通のものです。
しかし、時には放っておくと重症化し、治療期間も長くなってしまう痔もあります。どのような病気も早期にわかれば、楽に早く治ります。痔も同じです。自分の痔はどの痔で、どの程度のものかを知っておくことも必要ですし、わからない時は診察を受けましょう。 診察から治療まで、痔主様共通の悩みである痛みについては、極力少なくてすむように努力しておりますので、安心して診察に来ていただければと思います。
痔には、痔核(いぼ痔)、裂肛(切れ痔)、痔ろう・肛門周囲膿瘍(あな痔)などがあります。
治療方法は、痔ろう・肛門周囲膿瘍以外は、坐薬や舌下錠、便通コントロールなどで治癒することができます。 もうひとつ大事なことは、毎日の生活を見直すことで、痔の予防や改善を行うことができることです。すなわち、お尻をいたわるいくつかの注意点があります。
① 食物繊維とビフィズス菌を摂って快便をめざす
② 香辛料やアルコールは控えめに
③ 適度な運動を心がける
④ トイレの時間はなるべく短くする
⑤ お尻を冷やさない
また、これから寒くなると、痔主様にとってはつらい季節になります。
以上の注意点を守って、お尻を大事にしましょう。
