第32回 尿もれについて
泌尿器科医長 角 昌晃
尿もれが特別な病気であると皆さんは思っていないでしょうか?
最近のテレビのコマーシャルでも尿もれ用のケア用品が堂々と放送されているように、実際に困っておられる方は大勢おられると思います。特に女性は男性と違ってペニスがないため尿道が短く、出産や手術などで括約筋や骨盤の筋肉がゆるんで容易に尿もれを起こしやすくなります。せきやくしゃみなどでおなかの中の圧力が高くなったときにもれることを腹圧性尿失禁といい、女性に多いタイプの尿もれです。アメリカではこのタイプの尿もれにはまず運動療法で治療しますが、日本では運動療法と同時に内服療法も行います。これにより尿もれの改善が期待できます。
赤ちゃんは常に尿もれの状態といえますが、これは膀胱に尿がたまっても頭で排尿をコントロールすることがまだできないため膀胱が勝手に排尿するためです。年をとってから例えば脳梗塞、神経疾患などで膀胱の勝手な排尿をコントロールすることができなくなってしまった場合、トイレに行くまで間に合わず、尿もれを起こしてしまうことがあります。これは切迫性尿失禁といい、膀胱の勝手な排尿を抑えるような薬でコントロールすることができます。
尿もれで困るものは実は前立腺肥大などの排尿障害を起こす病気がかくれている時です。膀胱は尿で充満しているのに尿が出ないため、おなかの中に力が入ったときなど括約筋の力を超えるような力が膀胱に加わったときのみ尿があふれるようにもれます。これはいつ流性尿失禁といい、このタイプの尿もれにもれを止める薬を処方すると、尿がまったく出なくなったり、腎不全になったりと問題を起こします。
痴呆でトイレの場所がわからなくてもらしたり、足腰が悪くてトイレに行くまでに時間がかかるため、途中でもらしたりしてしまうような尿もれは機能性尿失禁といい、無理に薬物療法を行なうよりは、環境を整えてあげたほうがよいことがあります。
いずれにしても尿もれは恥ずかしいとか、人に相談できないものなどと思わずに、ごくありふれた一般的な病気であるとお考えください。おしめや尿もれパットに頼るだけでなく泌尿器科外来で相談してみてください。