第33回 貧血について
内科系診療部長(内科) 古家 寛司
貧血とは、文字どおり血が薄くなることですが、以下の基準があります。
血色素(ヘモグロビン)濃度の正常値は性と年齢で異なりますが、成人男性では14~18g/dl、成人女性では12~16g/dl程度です(ヘモグロビンは赤血球の成分)。したがって、成人男性、成人女性ではそれぞれ正常値未満が貧血となりますが、高齢者では男女差がなくなり男女とも12g/dl未満を貧血としています。
それでは貧血はどのような症状がでるのでしょうか。
まず、皮膚や粘膜が白くなり、疲れやすくなったり、頭痛、めまいなどがみられたりします。また、息切れや動悸がして運動ができなくなったりします。これは貧血になると赤血球の酸素を運ぶ力が弱くなり、十分な酸素を運べないためです。 貧血の種類はいろいろありますが、この貧血の鑑別診断に有用な指標があります。
平均赤血球容積(MCV)という数字です。
簡単に言うと、一つ一つの赤血球の大きさ(かさ)のことです。聞き慣れない言葉と思いますが、誰でも簡単に計算できますので、貧血と言われた方は試しに計算してみてください。 平均赤血球容積(MCV)はヘマトクリットの値を赤血球数で割って、その後、千をかけると計算できます。
たとえば、ヘマトクリットが45%で赤血球数が480万あると、45/480×1000=93.75となります。正常値は90前後ですのでこれは正常範囲です。 貧血で一番多い鉄欠乏性貧血ではこの平均赤血球容積は小さくなります(80以下)。つまり、赤血球の大きさが正常よりも小さいということです。
ただし、平均赤血球容積が小さい貧血は、すべて鉄欠乏性貧血とは限りませんので注意が必要です。
平均赤血球容積が大きくなる(100以上)貧血もあります。 その一つに、胃の全摘手術後の貧血があります。手術してから約5年以降に発症することが多く、ビタミンB12というビタミンの不足により発症します。これは、ビタミンB12の注射で劇的によくなります。 その他には、特に高齢者に多い骨髄異形成症候群といわれる貧血があります。これは、残念ながら現在のところ良い治療がありませんので、慎重に経過を見る必要があります。
多くの方は、日常生活に支障をきたすことはありませんが、赤血球輸血が必要になることもあります。 また、肝臓病などでも平均赤血球容積は大きくなります。
一方、平均赤血球容積が正常の貧血も多くあります。 この中には、たくさんの種類の貧血があり、詳しい検査をしてもらうことが必要な場合もあります。
いずれにしろ、貧血を指摘された方は、かかりつけの医師に相談してみましょう。