
第47回 転倒による骨折を防ぐには
整形外科(外科系診療部長) 内藤 浩平
人は、だれでも中年期以降、年を重ねていけば、自然と運動機能が低下していきます。
高齢期になると身のまわりのことをきちんとできる基礎的な運動能力(筋力、バランス能力、持久力、柔軟性、全身協調性)が低くなり、このことが転倒の引き金になってしまいます。 ある地域における一般高齢者の調査によると、年間転倒率が18%、老人ホームなどの施設入所高齢者になると転倒率が30%以上、さらに転倒による外傷発生率は60%、このうち打撲が38%、骨折が7%であったと報告されていました。
高齢になると転倒により骨折したことが引き金となり、寝たきりになってしまうことがしばしば見受けられ、転倒をどうすれば防げるかが大切になってきます。
これには、まず自分の基礎的運動能力を知ることが重要です。転ばないための運動能力の中で全身協調性を調べる簡単な方法に歩行テストがあります。これは10mのまっすぐな線に沿って歩いてみるテストで、スムースに速く歩ければ問題ありませんが、ゆっくりしか歩けないようであれば要注意です。このような人は、歩行に必要な筋肉を強くするために椅子に座って足踏み運動を1日30回、テーブルに手をついて1分間片足で立つ運動を1日3回行ってみましょう。毎日少しずつ運動することで筋力が強くなり、バランス能力を高くすることができます。
次に転倒による骨折を予防するためにはどうしたらよいでしょうか。検診などで、すでに骨密度を測定している人も多いとは思いますが、まず自分自身の骨密度を今一度正確に調べてもらうことが大切です。もし骨密度が低下していれば、その対策を十分に行うことで骨を強くすることができ、さらに近年服用が可能となった骨粗鬆症治療剤を用いれば、骨密度の低下による骨折を大幅に減少させることができることが明らかになっています。
日ごろの運動が身体能力を向上させ、骨粗鬆症に対する適切な治療が骨密度を改善し、転倒による骨折から自分自身を守ることにつながります。
まずは、自分の歩くスピードと骨密度を調べることからはじめてみましょう。
