第48回 『パーキンソン病の話』
神経内科(院長) 岡田和悟
「先生、背が伸びました」と診察室に入ってくるなり、2週間前に初めてパーキンソン病と診断され、薬を飲み始めた60歳代の女性が言いました。
確かに、前回診察したときは、前かがみで縮んでいた背筋がすっと伸び、小刻みでチョコチョコとしていた歩き方も歩幅が増してスタスタと歩かれるようになっています。また、じっとしているときに見られた、手のふるえも減ったようでした。
彼女が患っているパーキンソン病は、60歳代をピークに発症する脳の病気です。
大脳と脊髄の間にある中脳の黒質と呼ばれる運動機能に関係する場所の神経細胞が、何らかの原因で減り、ドーパミンという物質が不足する病気です。ほとんどの人が弧発例(家族に同じような症状がない)です。 代表的な症状としては、安静時振戦(じっとしている時のふるえ)、筋強剛(筋肉の動きが硬くなる)、運動緩慢(動作がゆっくりとなる)、姿勢反射障害(バランスの崩れに対応しにくい)があります。また表情が乏しくなったり、顔が脂ぎったりする場合もあります。
病気の頻度は1,000人に1人と言われ、高齢化に伴って増加がみられます。パーキンソン病に似たような症状を示す病気に、脳血管障害(脳卒中)や脊髄小脳変性症、薬剤性によるパーキンソン症候群などがあり、検査による区別が必要です。 現在では、パーキンソン病に対する何種類かの薬が開発され、症状の改善や長期的な管理が容易になっています。また、何よりご本人の生活の質(QOL)に対するよい効果が期待できます。症状によっては手術療法が行なわれることもあります。
患者・家族の親睦と啓発を目的として、全国パーキンソン病友の会があります。大田地区でもパーキンソン病患者・家族の会「みつばの会」が結成され活動されています。
先ほどのような症状で困っておられる人は、かかりつけ医に相談のうえ、神経内科を受診してみてください。