
第71回 超急性期脳梗塞の治療
脳梗塞とは 「血栓」 と呼ばれる血液の塊が、脳の血管をふさいでしまうことによって脳に血液が流れなくなり、脳の細胞が障害を受ける病気です。どの部分の血管がつまるかによって、 「顔面や手足が動かない」、「呂律(ろれつ)がまわらない」、「言葉が出ない」など、いろいろな症状が出現します。
これまで脳梗塞に対する治療は再発予防、リハビリテーションが中心であり、症状が後遺症として残ってしまうことが大半を占めていました。
ところが、平成17年10月にt-PAという血栓溶解剤が日本でも超急性期脳梗塞の治療薬として許可されました。この薬剤はすでにアメリカなどの諸外国では約10年前に許可され投与されています。t-PAは点滴にて投与される薬剤で文字通り脳の血管をふさいでいる 「血栓」 を溶解して(とかして)、再び脳に血液を流し、脳の細胞が障害を受けるのを防ぐ画期的な薬剤です。麻痺(まひ)などの後遺症を残さず、今までの生活が送れるようになる可能性がある、きわめて有効な治療薬です。
しかし、 「血栓」 をとかすほどの強い薬剤であるため、頭蓋(とうがい)内出血という重大な副作用を引き起こす可能性があり、 「諸刃の剣の治療薬」 とも言われています。脳梗塞を起こしてから時間が経過すればするほど、この薬剤を投与した際に頭蓋内出血を起こす可能性が高くなるので、遅くとも症状が出現してから3時間以内に投与しなければなりません。
また、治療開始前に、血液検査や頭部CT、MRIなどの画像診断も必要となりますので、 「顔面や手足が動かない」、 「呂律がまわらない」、 「言葉がでない」 など、脳梗塞によると思われる症状が出現した際には、一刻も早く当院を受診していただければと思います。
大田市立病院 神経内科医長 山口 拓也
