第14回 肺癌(がん)について
放射線科(診療支援部副部長) 杉原 正樹
悪性新生物が男女とも死因の第1位ですが、肺がんは、男性の悪性新生物死亡原因の第1位、女性では第3位で、現在も増加傾向にある疾患です。
肺がんは、組織型から小細胞がんと非小細胞がんに大別され、非小細胞がんをさらに扁平上皮がん、腺がん、大細胞がんに分けます。小細胞がんが全肺がんの15%、扁平上皮がんと腺がんがそれぞれ40%、大細胞がんが5%程度を占めます。また、がんの発生部位から肺門型肺がん、肺野型肺がんに分けることもあります。
肺門とは肺へ行く気管支、動脈、静脈が肺に入っていくところで、胸部レントゲン写真では心臓に近い部分を言います。肺野とはレントゲン写真で黒く見える部分です。小細胞がんと扁平上皮がんは肺門に発生することが多く、腺がんと大細胞がんは肺野に発生することが多いという関係があります。 治療に関して、非小細胞がんは、早期のうちは手術が最も良い治療法です。小細胞がんは進行が早く、見つかったときには既に転移を起こしていることが多いので、抗がん剤療法が治療の中心となります。
肺がんの自覚症状は咳、痰、血痰、胸痛などが主なものです。あまり特徴的な症状がないので、自覚症状を訴えて発見されたときには進行がんになっていることが多いのが、肺がんを治りにくい病気にしている原因でもあります。
肺がんの発生には喫煙が重要な因子であり、小細胞がんや扁平上皮がんは喫煙者に多く発生します。50歳以上の男性で、喫煙指数(1日に吸うたばこの本数×喫煙した年数)が600以上の人に肺門型肺がんの発生が多いと言われています。腺がんは喫煙との関係が乏しく、喫煙しない人にも発生します。
肺門型肺がんは咳、痰、血痰などの自覚症状を起こしやすく、痰の検査でがんを診断できることが多いのですが、肺野型肺がんは早期のうちは無症状なので早期診断は画像診断に頼らざるを得ません。画像診断には従来、レントゲン写真が使用されてきましたが、早期の肺がんを見つけるためには不十分でした。しかし、近年、CT(シーティ:コンピューター断層装置の略)を検診に使用することで多くの早期肺がんが見つかるようになりました。当院でも人間ドックにCTを使っており、手術で根治可能な早期肺がんが多く見つかっています。
生活上の注意として、喫煙が肺がんの第一の危険因子ですから、禁煙することが一番大事です。早期発見のために50歳から70歳の後発年齢の方には2~3年に一度のCTによる検診がお勧めです。喫煙される方は痰の細胞診も同時に行われるのがよろしいでしょう。