第50回 『手洗いについて』
内科系診療部長(内科) 古家 寛司
みなさん、こんにちは。今回は「手洗い」についてお話します。今さら手洗いなんてと思われる人もおられるかと思いますが、手洗いは最も大切な感染予防策です。
「医療関連感染(病院感染)の予防策は手洗いに始まって手洗いに終わる」と言われているほど手洗いは重要です。MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)などの薬が効きにくい細菌は、自分で歩いたり飛んだりすることはできないので、何かにくっついて運んでもらうのです。その一番多い経路が人の手です。
MRSAなどの細菌を地球から消滅させることは不可能です。そこで、人の手を介して患者さんに運ばないようにするための一番よい方法が手洗いなのです。
手洗いには、3つの種類があります。それは、日常的手洗い、衛生的手洗いと手術的手洗いです。日常的手洗いとは、トイレの後や帰宅時、食前などの日常生活における手洗いです。水道水でさっと流し、汚れていれば石けんを使われると思います。 ところが、この日常の手洗いは患者さんに医療行為を施す時には不十分であり、病院ではより念入りな衛生的手洗いが求められます。衛生的手洗いは薬用石けんあるいは石けんを用いて手首までを念入りに洗う手洗いです。
これにより手にくっついた細菌を取り除いて患者さんに運ばないようにします。
最近では、目で見て明らかに汚れていなければアルコールを含有した速乾性手指消毒剤を用いた手洗いで代用されるようになりました。 長くなりましたが、ここでみなさんに言いたいことは、「病院などに見舞いなどで来院された時には、洗面所で手洗い、または病室の前の壁にかけてある速乾性手指消毒剤を使用してください」ということです。
MRSAなどの細菌は、われわれ健康な人が持っていても悪さはしませんが、体力が弱った人には大変な悪さをします。病院内には残念ながら、目に見えないところに細菌がいます。
これを見舞いの人が知らないうちに患者さんに運んだり、家に持って帰ったりしないためです。速乾性手指消毒剤の使い方は、ポンプをゆっくり最後まで押してもらうと出口から約3ccの液体が出ますので、片手の平に受けてください。それを、手全体、指の間、爪の先、手首まで乾燥するまでよくすりこんでもらえば大丈夫です。
最後に、病院の床は毎日掃除をしていますが、細菌が潜んでいる可能性は十分にあります。不用意に床に物を置いたり、座ったりすると細菌が床より移動します。ご注意ください。子どもさんを連れておられる場合は、特にお気をつけください。