第51回 雷と除細動(=電気ショック)
循環器科医長 梅野 哲弘
「7月最後の日曜日、海水浴場に落雷、2人が心肺停止」というニュースがありました。雷のエネルギーは、すざましいものだと驚きます。救命救急センターの日常を伝える番組の中で、いったん機能が停止した心臓に電気ショックを加えて心臓の機能を回復させる場面が出てくることがあります。
同じ電気でも雷では心臓が止まってしまう、一方では電気ショックをかけることで正常の脈が回復する、何か不思議な感じがします。
成人に突然発生する心配停止の多くは、「心室細動」という異常な心臓リズムによって引き起こされます。血液を送り出すための心臓のポンプ活動が妨げられると、脈も呼吸も止まってしまいます。その結果、脳への血流が10分以上途絶えてしまうと正常に回復する可能性はほぼゼロになります。
この「心室細動」に対する最も効果的な手当は、除細動器と呼ばれる器械で心臓に「除細動(=電気ショック)」を施すことです。
平成16年7月より、一定の訓練さえ受けていれば突然の心停止となった人に対し、市民救助者が自動体外式除細動器(=AED)を使って「除細動」を行ってもよいとされました。 愛知県で開催中の「愛・地球博」の会場では、一般市民がAEDを使用し救命できたという報道がありました。実際の心肺蘇生の現場では、救命の連鎖(=つながり)といわれるような行動を、とぎれることなく行うことが最も大切です。
倒れた人を発見し、意識がないことを確認したら、
①119番(消防署)にすぐ連絡する
②心臓マッサージと人工呼吸を行う
③必要に応じてAEDを使用する。
将来、公共機関を中心にAEDが設置されていく予定です。倒れている人を助ける時、あわてないためにも、一度救急救命講習などを受講されてみてはどうでしょうか?