第46回 帯状疱疹(胴巻き)と痛み
麻酔科(副院長) 西尾 祐二
帯状疱疹については以前皮膚科の医師が書いていますので、今回はこの病気に特徴的な「痛み」についてお話します。
帯状疱疹は、「みずぼうそう」のウイルスが神経の中で再び活性化することにより発病します。神経内でウイルスによる炎症が起こるため、痛みが先行するのが特徴で、その後、神経に沿って皮膚までウイルスが到達すると皮膚にはれや「ぶつぶつ」が生じます。このころ病院を受診されることが多いでしょう。
治療により約1ヶ月で皮膚は治りますが、痛みが治りきらないことがよくみられます。この状態を帯状疱疹後神経痛(PHN)といいます。PHNになってしまうと完全に痛みを治すことが困難となり、一生痛みに悩まされることも少なくありません。一般的に、PHNになりやすい人は、高齢者、皮疹が重症の人、痛みが強い人、皮疹部の知覚障害が強い人などです。
ある報告では、40歳未満で2%、40歳~50歳代で15%、60歳以上では41%の人がPHNになったとあります。痛みが治りきらない理由はよくはわかっていませんが、炎症により神経が変性し、痛みを伝える神経が「異常な状態」になるためと考えられています。これを防ぐには、ウイルスの増殖を抑える目的で、抗ウイルス剤をできるだけ早期から服用または点滴すること、神経の異常状態の成立を防止する目的で、神経ブロック注射を受けることです。
前者はどこの病院でも可能ですが、後者は麻酔科がある病院でしか受けることができません。すべての人が神経ブロックを受ける必要はありませんが、上述のようなPHNになる危険性の高い人は、できるだけ早期から受けることが肝要です。
神経ブロックを早期(少なくとも1ヶ月以内)に開始すれば、痛みの治癒や大幅な軽減も可能となります。