
第36回 糖尿病と医療費
健診センター医長 山内 克実
皆さん、明けましておめでとうございます。
医療費の自己負担の増大もあり、病気で病院通院中の人は今まで以上にお金がかかるようになりました。 ご存知のように国民医療費は現在、増加の一途をたどり2001年度は31兆3,234億円、国民一人当たりの年間医療費は24万6,100円となりました。糖尿病医療費も年々増加し2001年度は1兆1,743億円でした。
これを治療を受けいている患者数212万人で割ると、患者一人当たりの入院と入院外を含めた平均的な年間医療費は約55万円となります。 医療機関における実際の糖尿病医療費を診療報酬明細書から分析した報告では、糖尿病の合併症を有しない患者では年平均33万円、合併症を有する患者では41万円から80万円(平均55万円)であり、合併症の数が多いほど高くなったとしています。
糖尿病に特徴的な三大合併症は、末梢神経の障害、網膜の障害、腎臓の障害の三つを指しますが、前述の合併症を有する患者の医療費には網膜の障害の際に施行されるレーザー光凝固術や、腎不全が進行した時の血液透析の医療費は含まれていません。レーザー光凝固術は通常11万円、透析は1か月50万円程度かかります。これらを併せて医療費を考えると、糖尿病は合併症を来さない内に治療した方が、いかにお金がかからなくて済むかご理解いただけると思います。
1997年に行われた、第1回糖尿病実態調査では、糖尿病が強く疑われる人が、690万人でしたが、2002年第2回目の調査が行われたときは、740万人に増加していました。 にもかかわらず実際の治療を受けておられる人は210万人程度にとどまり、未だ無治療の人が多くおられるようです。
糖尿病は放置しておくといろいろ障害をもたらすやっかいな病気で、お金もかかる病気です。賢く治療し無駄な出費をしないですむように心がけましょう。
