第98回 『人工授精(AIH)の話』
少子化が叫ばれて久しく、第三次ベビーブームの山は、ほとんど感じられません。
ここでこの30年間の生殖補助医療(ART)の進歩を振り返ってみましょう。
昭和30年代から昭和50年代に試みられた「試験管ベビー」。かつてはフィクションの世界の話にすぎなかった体外受精児も、1978年に世界で初めて、そして日本では1983年に初めて生まれました。
その後、胚の凍結保存から卵細胞内への精子注入まで、いろいろな方法が世界各国で開発され、妊娠率も向上してきました。
しかし時代は変わっても「挙児希望」には、まずは精子と卵子とが出会うことが始まりとなります。
まずは自然妊娠の流れを順に書いてみます。
①卵管膨大部で精子と卵子(ともに配偶子)が出会い
②受精して接合子になり
③分割を進めながら、ゆっくりと約3日間かけて卵管の中を移動し
④子宮内に着床して妊娠成立
となります。
人工授精(AIH)とは、生殖補助医療の前に前記①の段階の「排卵日の頃に、精子を卵子の近くにお届けします」というところだけをお手伝いする方法です。
事前に、精子に対する抗体はないか、排卵するのか、卵管は通りにくくないのか・・・など、基本的な検査は必要ですが、ほとんどの内容は保険診療の枠の中で実施可能です。
このたび排卵前に2~3回、排卵後は週に1回程度、平日の午後に大田市立病院の産婦人科外来を受診していただければ、人工授精を実施することが可能になりました。
スタッフ一同お待ちしています。まずは産婦人科外来までお電話ください。そして、ぜひ一度受診してみてください。
御夫婦でおいでになることができれば、時間を決めて面談時間も用意することができますよ。
産婦人科部長 寺戸 博文