第102回 『子宮頚部がんとウイルス、ワクチン』
HPVという言葉をお聞きになる機会が増えたと思います。HPVはヒト(ヒューマン)パピローマウイルスの略で、ヒトに乳頭腫(イボ)を作るウイルスです。
最近、このウイルスが子宮の頚部にがんを作ることがわかり、子宮頚部がんへの取り組みが大きく変わろうとしています。
多くの女性は、20代で一度はこのウイルスに感染し、そのほとんどが自然にウイルスを排除します。しかし、ごく一部が持続感染となり、1000人に1人くらいの割合で子宮頸がんになるといわれています。
☆ 子宮頚部がんとウイルス検査
従来「毎年受けましょう」と宣伝していた子宮(頚部)がん検診ですが、ウイルス感染の有無によってガンになるかどうかがほぼ決まるため、5年以上続けて検診で異常がない人は、毎年の検診でなくても良いという方向に動いています。また、従来の細胞診断による子宮がん検診に併せてウイルス検査を行い、子宮がん検診受診の間隔を3~5年にしようという試みがあります。
このウイルス検査と細胞診断の併用検診でその精度が高くなります。
今後大田市もウイルス検診併用でいけると良いのですが、当市の場合は、まず3割程度といわれる検診の受診率を上げることが必要かもしれません。
☆ 子宮頸がんワクチンについて
最近、子宮頸がんワクチンが日本でも使用可能になりました。使われ始めて6年あまりのため詳細不明な部分がありますが、ウイルスへの抗体を作り、子宮頚部がんを予防すると期待されます。
現在、ワクチンの予防接種には3回の注射と約5万円の費用がかかるため、公費での接種はなかなか進んでいません。小学生のうちに全員接種が可能になれば、数十年後ではありますが子宮頸がんがほとんどない社会が実現できると期待されています。
今後のウイルス検査やHPVワクチンについての情報に敏感になっていただき、有効な手段を選んでいただきたいのですが、まずは従来からある子宮がん検診をきちんと受けていただきますようご案内いたします。
産婦人科上席部長 槇原 研