第65回 高齢化と骨粗鬆症
生きている骨
われわれが気づかないうちに、古くなった骨は、骨をこわす細胞(破骨細胞)によって毎日こわされ、新しい骨が骨を作る細胞(骨芽細胞)によってつくられています。
こわされる骨の量とつくられる骨の量とが同じになっているために、骨の量は一定に保たれています。このバランスがくずれて骨がもろく折れやすくなった状態を 「骨粗鬆症(こつそしょうしょう)」といいます。
高齢化と骨粗鬆症
紀元前時代にも骨粗鬆症があったことがわかっていますが、骨粗鬆症が注目されるようになってきたのは、比較的最近のことです。これは平均寿命が伸びて高齢化がすすんだことと関係しています。
日本人の平均寿命は、明治時代には男女とも40歳台でしたが、昭和20年代には男女とも50歳を超え、平成18年には、女性が86歳、男性が79歳にまで延びました。
寿命が延びたことで、高齢者が骨折をきっかけとして寝たきりとなり、日常生活を1人でおくることが難しくなる状況が増えてきています。
骨粗鬆症では、気づかないうちに身長が低下して背中がまがり、心臓や肺の機能に影響し、継続して運動することがむずかしくなるなど日常生活に影響を与えます。
骨は人生を反映
骨は生きてきた生活環境や歩んできた人生と関係しています。食料事情の悪さ、好き嫌い、ダイエット経験、タバコ、アルコールを多く飲むことも骨の量を減らす要因です。
女性では50歳をすぎると卵巣の機能が低下して急速に骨がこわされます。ステロイド治療中の人やリウマチなどの病気でも骨が折れやすくなることが知られています。骨の密度は外来で短時間に測定することもできますから、気になる方はチェックしてみてはどうでしょうか。
治療目標
骨粗鬆症治療の目標は、骨折を防ぎ、自立した日常生活を快適におくることにあります。
年齢を重ねても日常生活を快適にすごすためには、骨粗鬆症を予防することが重要です。幸いにも医学研究の成果により、骨折を予防できる治療薬もできていますので気軽に相談してください。
日本は世界有数の長寿国家です。その中でも特に高齢化率の高い島根県。大田市も同様です。が、故に、高齢化がすすんだ地域だからこそ、みなが骨粗鬆症に関心をもち、早期予防で日常生活を元気にすごせるようにしましょう。
大田市立病院 総合内科医長 須田 道雄