
第58回 健診を医療コストから考える
日本の医療保険制度は、世界的にみても優れており、今後も守られるべき制度です。
医療費の増大は、主に重要増大の反映であって、お金がかかるからよくないという問題ではありません。
しかしながら、無分別に保険を使えば制度が破綻します。例えば、交通事故があたりまえにおきるという前提では、自動車保険制度は成立しません。日ごろから安全運転に心がけていても、不幸なことに事故が起きてしまう、しかし事故発生の割合が少ないから大きな補償が得られるのです。
保険診療上最低限守られるべき具体的な診療内容を、「保険医療機関及び保険医療養担当規則」に定めています。
その第20条第1号の(ロ)に、「健康診断は、療養の給付の対象として行なってはならない」とあり、健診は、自費負担あるいは、労働安全衛生法や老人保健医療法によって行なうようになってます。
人は、生老病死を免れないとはいえ、少しでも健やかに生きるために、可能な範囲で病気を予防することが大切です。それは結果として保険医療費増大の抑止にもなるでしょう。
そのためには、各人の日ごろからの健康管理が重要です。具体的には定期的な健診を受け、その結果を生かし、放置することなく、本人の健康維持の一助となることでしょう。
これは病気の予防にも役立ち、仮に異常が発見されたとしても、早期治療にあたることが出来るわけです。
実施可能な検査項目の制約や検査結果の精度の問題もあり、健診が必ずしも万能というわけではありませんが、行動をおこさなければ、何もえられません。
日ごろの自己管理に加えて、まずは定期的に健診を受けましょう。
大田市立病院は、広域な圏域のなか、唯一といってもよい地域医療の中核病院です。
膨大な一般診療に加えて、救急医療に追われ、どうしても健診センターは、脇役的な存在になりがちですが、微力ながらも、少しはみなさんのお役に立てればと日々考えています。
大田市立病院 健診センター医長 山本 滋
