
第12回 貧血について
内科(内科系診療部長) 古家 寛司
健康診断で貧血を指摘された方もあるかと思います。今回は、皆様おなじみの貧血についてお話しします。
貧血とは、文字とおり血が薄くなることですが、以下の基準があります。血色素(ヘモグロビン)濃度の正常値は性と年齢で異なりますが、成人男性では14-18g/dl、成人女性では12-16g/dl程度です(ヘモグロビンは赤血球の成分です)。 したがって、成人男性では14g/dl未満、成人女性では12g/dl未満が貧血となりますが、高齢者では男女差がなくなり男女とも12g/dl未満を貧血としています。
それでは貧血はどのような症状がでるのでしょうか。
まず、皮膚や粘膜が白くなり、疲れやすくなったり、頭痛、めまいなどがみられます。また、息切れや動悸がして運動ができなくなったりします。 これは赤血球には酸素を運ぶ力があり、貧血になりますと酸素を運ぶ力が弱くなります。そして、体を動かすとそれだけ酸素が必要になりますが、貧血ですと十分な酸素を運べないためです。 貧血のなかでも一番多いのは、鉄欠乏性貧血です。これは赤血球の大きさが小さくなり、血液中の鉄や体に蓄えられた鉄が低下するもので、すぐに診断はつきますが、原因はさまざまです。 一般的には鉄剤を内服すれば軽快しますが、その前に原因をはっきりさせておく必要があります。その原因の一つには、偏食、ダイエットのし過ぎなど食事に含まれる鉄不足が考えられます。 また育ち盛りの成長期や妊娠・授乳期には鉄の需要が増えますので普通に食事をしていても足りなくなることがあります。
有経期の女性は、月経で失われますので貧血になりやすいのですが、子宮筋腫や子宮内膜症による病的な過多月経の場合もありますので婦人科での診療が必要になる場合もあります。 成人男性や閉経後の女性の鉄欠乏性貧血で注意が必要なのは、消化管出血です。胃潰瘍や痔などの良性疾患以外に、癌によるものがあります。特に、胃癌や大腸癌のために毎日少しずつ出血しますと癌の症状がでる前に貧血になります。 貧血の検査(胃カメラ、大腸内視鏡、婦人科診察など)をお勧めしますと、面倒がる方も結構多いのが現実です。しかしながら、悪性腫瘍が潜んでいることもありますので、検査を面倒がらずに受けることが大事です。
鉄剤は、以前は緑茶との併飲が禁止されていましたが、最近は多少吸収が悪くはなりますが禁止する必要はないとされています。鉄剤を服用しますと、速やかに貧血は改善しますが、鉄分を体に蓄える必要がありますので、お医者さんに「もういいですよ」と言われるまで根気強く飲む必要があります。 鉄分を多く含む食物としては、レバーや赤みの肉などの以外には、海草(ひじきなど)、貝類、豆類(大豆など)などがあります。栄養士さんに指導してもらうことも大切です。食物ではありませんが、テフロン加工処理されていない鉄鍋の使用も鉄供給には良いようです。
鉄欠乏性貧血の治療をしても治らない時などは、別の種類の貧血であることもありますので、かかりつけの先生に専門医を紹介してもらわれることをお勧めします。
