第25回 背部・腰部痛と骨粗鬆症について
整形外科(外科系診療部長) 内藤 浩平
ふだんは、何気なく持ち上げても背中が痛むことはなかったのに、今日はどうも背中や腰にピリリと痛みがはしったという経験のある人は多いと思います。近年の高齢化に伴い、背部・腰部の痛みを訴える人は全人口の60%以上との報告もあります。
このような痛みの原因部位には、背中や腰の脊椎(骨)、脊椎と脊椎の間にある椎間板(軟骨)、神経の集まりである脊髄や神経根、脊椎の回りにある筋肉などがあり、これらの組織が障害されることで痛みが出現してきます。痛みを軽減させるためには、その原因部位と障害の程度をエックス線像やMRIで調べて骨粗鬆症や変形性脊椎症、腰椎椎間板ヘルニア、腰椎捻挫、筋・筋膜性腰痛などを鑑別診断したうえで治療が開始されます。
このうち、骨粗鬆症は、骨の中の骨量が年とともに減少して、特に脊椎の骨が弱くなり骨折しやすくなった状態です。女性ホルモンが減少してくる閉経期以降の女性に多くみられますが、70歳以上では加齢に伴う変化でも発症してきます。また、糖尿病や関節リウマチなどの病気や、ステロイド剤などの薬剤の服用でも発症し、時には男性にも起こることがあり、骨減少症を含めた骨粗鬆症の患者数は日本全体で約1,800万人(15%)以上と推計されています。
骨粗鬆症を予防するためには、まず自分の骨量がどのくらいあるのかを知っておくことが重要です。検診や医療機関で骨密度と骨代謝マーカーの測定検査を受けることで自分の骨量が平均値と比べてどのあたりにあるかがわかれば、早めに対策を立てられます。
治療の基本はカルシウムを多く含んだ食事を摂り、適度な運動を行うことです。しかし、骨量が平均値と比べて70%を下回るようであれば、カルシウム剤、ビタミンD製剤、エストロゲン製剤、カルシトニン製剤、ビスフォスフォネート製剤などを積極的に服用することで骨量を増加させる必要があります。 また、運動療法が骨量の増加や痛みの改善に有効であり、自宅や医療機関で体操療法、歩行訓練、筋力増強訓練、バランス訓練を行うことで筋力がつくと、転倒に伴う骨折を防ぐことができるようになります。
背中や腰部に慢性痛がある方、最近どうも背中のまるみが気になるという方は、骨密度検査や運動療法について医療機関にご相談ください。